車の査定にみる車オークションと車買取事業

車オークションと買取事業の歴史

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 車の査定額については、中古車買取専門店の登場が大きく影響しています。車の買取専門店という新しい業態が、日本に現れたのは平成になってからのことです。平成元年 (1989年)9月にアップルオートネットワークが設立され、その後平成6年(1994年)にガリバーインターナショナルが参入し、中古車買取業者の台頭が顕著になってきました。このことは、自動車メーカーにも影響を与え、トヨタ(T-UP)も日産(カウゾー)も、中古車買い取り市場に参入してきています。

 

 この新しい業態の生まれた背景に考えられるのは、中古車オークションの台頭です。いま全国で、毎週もしくは隔週等の定例で開催されている中古車オークション会場は、130余。 平成20年(2008年)のオークション市場年間出品台数は約880万台、12年まえの平成8年(1996年)には約400万台でしたから、その市場の拡大には目を見張るものがあります。

 

 以下では、今世紀になってから、なぜ車の査定が高額になったのか、その理由を探るため、また、クルマの新しい買い方を見つけるために、車オークションと買取事業の歴史について簡単に見てみましょう。


メーカー系 中古車オークションのはじまり

60年代(昭和35年〜):

そもそも、中古車オークションはアメリカで始まったと言われています。日本で車のオークションが始まったのは、昭和42年(1967年)のトヨタオークションです。これがのちに「メーカー系オークション」と呼ばれるものの走りです。なぜこの頃に車のオークションが始まったかというと、戦後いかに日本が経済的に復興したといっても、各家庭で自動車を購入できるほどの購買力がついてきたのが、60年代になってからのことだからです。これには、昭和35年 (1960年)12月末、池田内閣が閣議決定した所得倍増計画とともに、わが国の経済が驚異的な成長を遂げるという背景がありました。

 

新車の飛躍的な売れ行きにともなって、中古車の下取り率が高くなったというのは、必然の成り行きだったのです。ちなみに日本自動車連盟(JAF)が設立されるのは昭和37年(1962年)のことです。

 

この頃、新車ディーラーでは、新車販売から得られるインセンティブで経営が支えられており、何ら特典のない中古車部門の販売は、あくまでも新車販売部門で下取りとして否応なく発生する、排出物の処理のようにみられることもあったのです。その経営者の意識が、新車のセールスマンで成績の上がらない者を中古車部門にまわす、ということにあらわれていました。

 

しかしながら、増え続ける中古車市場をみて、全国各地で、独立系の中古車専業ディーラーが誕生するようになりました。この中古車ディーラーは、新車ディーラーのように安定的に中古車を仕入れるルートを持っていませんでしたが、一方、新車ディーラーにも大量に発生した下取り車を、いかにさばくかという問題がありました。このとき登場したのが、中古車ブローカーです。ブローカー業者は、新車ディーラーの大量の下取り車を、効率よく中古車ディーラーに転売していったのです。

組合系 中古車オークションの開催

70年代(昭和45年〜):

70年代になると、中古車ディーラーも、業界の地位向上を図るため、各地に同業者組合を設立するようになってきました。昭和46年(1971年)には、JU(日本中古自動車販売協会連合会)が設立され、業界の近代化、取引慣行の適正化がいっそう進められました。

 

このようななか、大都市近辺では、組合主催による中古車オークションが開催されるようになり、中古車ディーラーの仕入れにオークションルートが追加されるようになってきたわけです。この「組合系オークション」の特徴は、同業者間の在庫交換という意味もあり、利益を得ることが大きな目的ではなく、基本的に会員以外の参加の認められない閉鎖的雰囲気にあったと言われています。

企業系 中古車オークションの誕生

80年代(昭和55年〜):

さきほど述べたように中古車オークションにはもう一つ、メーカー主導で運営され、全国各地のディーラーの中古車販売の利便性を確保するための「メーカー系オークション」というのがあります。「メーカー系オークション」というのは本来、メーカーの中古車を売るのが目的で、一般の中古車販売業者は買うことはできても、売ることはできませんでした。いわば、メーカーの在庫処分市のような性格をもったものでした。これでは、中古車販売業者同士の双方向の商売は成り立ちません。

 

これに不満と危機感を覚えることによって、80年代になると、あらたな企業が生まれてきました。つまり、中古車オークションそのものを大きな事業チャンスととらえ、いわゆる「企業系オークション」といわれるものが誕生してきたわけです。この「企業系オークション」は、出品料や成約手数料から収益を上げることを目的として、そのため「組合系オークション」のように地域を単位にするというのではなく、全国の中古車業者をターゲットに大都市周辺に大規模な会場を建設し、ポス&コンピューターの導入など、最新の情報技術によって、市場を席巻するようになりました。80年には、USS(ユー・エス・エス)が創業し、いまでは業界最大手の企業になっています。

 

このように「中古車オークション」といっても、「組合系オークション」と「メーカー系オークション」および「企業系オークション」といわれるものがあるわけです。

 

またここで特筆すべきは、85年に開始したオークネットの「中古車TVオークション」でしょう。このときはまだ、参加会員数は560社でしたが、いまでは7000社を超えています。このオークネットの特徴は衛星通信と地上回線を組み合わせた独自のネットシステムで、バーチャルなオークション会場を提供したことです。つまり、オークネットの中古車TVオークションの特徴は、これまでのように現車オークション会場まで出かけて目当ての車輌の出品時間を待つということや、出品車輌を会場まで運ぶという必要がなく、中古車販売店の手間と時間を省くことができる、画期的なシステムを創りあげたことにあります。

 

しかし、このTVオークションも、当初大きな問題がありました。つまりTVオークションの場合、現車の確認が、静止画像によって行われるので、業者のあいだにある「現車を見ないで、中古車を買えるものか!」という強い固定観念からの抵抗があったことです。

 

これまでの現車オークションの場合、出品車両をオークション前に下見することができ、落札しようとする車は事前に自分の目で確認できるわけであり、これがないと、とんでもないクルマをつかまされる危険性が多分にあり、安心して落札できないということになるからです。

 

そのような不安や障害を取り除く必要があったわけですが、それを解消する方策があったからこそ、オークネットはTVオークションというシステムを創案することができたわけです。その方策というのが、「プロの認定検査員」制度です。はじめオークネットの検査部門として業務を開始しましたが、のちに検査専門会社、株式会社オークネット・インスペクション・サービス(略称AIS)として独立。この認定検査員になるには、6ヶ月という長期の研修期間と、また認定試験に合格しなければならないという厳格なものでした。その検査は、250項目にも及ぶ車輌チェックを行い、中古車の価値を判断する重要なポイントとして、10段階で「評価点」として表示するものです。

 

そのため、この厳格な検査体制が、次第に業界で認められ、参加会員数の増加につながっていったわけです。中古車一台一台を厳正かつ公平に検査し、安心して中古車を購入できるよう、中古車の「品質評価基準」のデファクトスタンダードになる、これがAISの使命になったわけです。この画期的ビジネスモデルによって、オークネットが業界に与えた影響は大きかったのですが、その本質は、中古車は「一物一価」(注)と言われるように車両1台1台に、まとわりついて離れていなかった、その車輌に関するさまざまな情報を、車輌と分離したところにあると言えるでしょう。いうなれば「車輌と情報の分離」に成功したということにあります。

 

つまり、そのクルマのどこにどんな大きさのキズがあるとか、事故歴があるがどの程度のものかとか、内装の汚れ具合とか、いままで、現車会場に行かなければ納得できなかったものが、現車と遠く離れた場所(自分の店)で確認できるようになったわけです。

 

 

(注)「一物一価の法則」というのは、本来「完全競争が行われるならば、同一時点・同一市場では、同質の商品には一つの価格しか成立しないという経済法則」(大辞泉)という意味で使われてきた言葉です。しかし、ここでいう「一物一価」は、中古車は新車と違って、一台一台コンディションや傷み具合が違い同じクルマは存在しないので価格もそれぞれ違う、という意味で使っています。 しかし、最近これを、本来の意味と使い方が違うとか、また、その批判を受けて、業界関係者の中には、これを使うことを自粛したり、ほかの造語(「一車一価」「一品一価」など)で置き換えている人がいますが、これはおかしなことです。 これを批判するというのは衒学であり、自粛するというのは卑屈というべきでしょう。なぜなら、言葉というものは、過去の一時点にとどまるものではなく、時代とともに変化する生きものとみるべきであり、ある程度多くの人たちに使われるようになったら、その言葉に新しい意味が付加されたとみるべきだからです。さらにこの場合、本来の意味の用語のほうが不適切であり、本来の意味では「同質物一価」または「同一物一価」という用語が使われるべきものであったと思われるからです。「一物一価」という用語は、中古車にこそ、ふさわしいと思っているのは、おそらく大勢おられるのではないでしょうか。これからは、「一物一価」という言葉を、遠慮なくどんどん使ってもらいたいものです。そうすれば、辞書の「一物一価」に、もう一つ新しい意味が加わるのは、そう遠い日のことではないでしょう。

車買取専門店の勃興

90年代(平成2年〜):

ときに日本経済は1986年12月からはじまったバブル経済で、1989年の大納会(12月29日)には日経平均株価最高値38,915円を記録したものの、1990年3月になると大蔵省通達による、いわゆる土地の「総量規制」という大失態によって、バブル崩壊の道をひたすら辿るということになったわけですが、さらに日銀(三重野総裁)による金融引き締めもそれに拍車をかけることになったわけです。

 

かくして1991年2月にはバブル景気は終焉を迎えましたが、中古車買取専門店という新しい業態が日本に現れたのは、この頃です。1989年にアップルオートネットワークが設立され、1994年にはガリバーインターナショナルが参入してきました。

 

1995年頃になると「インターネット革命」という言葉が、ようやく世間に広まり始めました。この90年代後半にいたって経済社会に大きな影響を与え始めたインターネット革命は、2000年にはネットバブルの崩壊を経験していますが、いまあらゆる分野に浸透しつつあるのは周知のとおりです。

 

90年代は、オートオークションの市場が広がるなか、進展してきたインターネットとオートオークションの関係をどのように構築していくかという、ある意味試行錯誤の段階だったといえるでしょう。したがって、真にインターネット革命の利便性を享受するためには、「車両と情報の分離」が中古車販売業界にとって必須の事柄であるということが、まだ十分に認識されることのなかった時代ということもできるでしょう。

 

しかし、高品質な日本車の中古車のことを考えれば、「車両からの情報の分離」は、それは日本ばかりではなく、地球の隅々にまで、その情報が行きわたる可能性があることを示しています。そこにまた、輸出をメーンとした新たなビジネスモデルも生まれる余地もあるわけです。

中古車オークションの隆盛

00年代(平成12年〜):

2007年(平成19年)のオークション市場年間出品台数は約840万台で、12年まえの1996年(平成8年)には約400万台だったことは、冒頭に記しましたが、中古車の登録台数は、ほぼ横ばいです。ではなぜ、オークションの出品台数だけが急増していったのでしょうか?

 

一つは、このオークション市場の拡大と相互的に作用していると考えられるのですが、中古車販売業者が、長期在庫のリスクを回避するためにもオークション会場を利用することが、非常に便利だということになってきた、ということがあると思われます。つまり、長期在庫のリスクを回避するため、オークション市場が大きくなってきたのか、それとも、近代的で便利なオークション会場が次々とオープンしたので、オークション会場への出品が多くなっていったのか、両方の側面があるように思われます。

 

もう一つは、平成17年1月1日スタートした自動車リサイクル法です。同法の施行によって、それまでならば解体処分に回されていた低年式車や多走行車が、料金負担を避けるためリユース車としてオークション市場で取引されるようになってきたからです。事実、平成17年のオークション出品台数は、それまでの伸び率を大きく上回っています。

 

このように、オークション市場が拡大するなか、企業系オークションは、メーカー系オークションに比べて低い成約率をいかに引き上げるかということが当面の課題となっています。これにはインターネットの活用で成約率のアップを図ることがもっとも効率的なわけですが、これにはいま、会場に来ないでも落札できるネット競売システム、いわゆる「外部応札システム」を導入し、落札率のアップを図っています。しかし、ここでも、大きなネックになってくると予想されるのが、「車輌と情報の分離」が、いまだ完全になされていないということです。

 

オークネットの登場は業界に大きなインパクトを与えましたが、オークション市場の占有率からみれば、今後の業界の将来は、USSを筆頭とする企業系オークションの動向が大きな鍵を握っています。 企業系オークションが現在の市場占有率と会場規模の大きさに満足してしまい、現在のような簡単な出品票一枚の情報で事足れりとするのか、あるいは、企業系オークションが現状に立ち止まっているのを見て、新たな企業が参入して、いっそう「車両と情報の分離」を推し進めるのか、進めないのか、インターネット革命がもたらす大きな時代のうねりのなか、中古車販売はいま、歴史の踊り場に立っているのは間違いない。

新時代の車査定

中古車買取専門店という新しい業態が、日本に現れたのは平成(1989年)になってからのことだということはさきに述べましたが、なぜ、ながながとオークションの歴史について語ってきたかというと、中古車買取事業というものが、オートオークションの台頭なしには考えられないと思われるからです。

 

80年代に誕生した「企業系オークション」が、徐々に事業を拡大していったことによって、すなわち、買取専門店によって買い取ったクルマを、すぐさま流通に乗せるプラットフォームが出来上がっていたからです。すなわち、中古車オークションの隆盛なしには、日本において買取事業というものは、発生しなかったと断定してもよいのではないでしょうか。

 

そもそも、物品の購入というのは、物品の売却処分とは、まったく違った性質をもっています。それは、自動車であっても同じです。すなわち、購入するときは、その車にこれから自分が乗ることになるわけですから、どこのメーカーのどんなクルマかとか、故障したときとか、整備するときとか、その他アフターサービスなど色々なことを想定して購入するので、販売店がどこかということは、かなり重要な要素になります。つまり、購入したクルマとの関係は、車があるかぎり継続しているわけです。

 

しかし、いままで乗っていた車を売るときは、このような煩わしいことを考える必要がありません。車を売ることによって、その車との関係すべて終わってしまうからです。したがって、売却時に関心が起きるのは、売却価格くらいなものでしょう。つまり、車の査定価格がいくらになるか、というのが一番の関心事といってもよいでしょう。

 

すなわち、販売店が増えるというのは、販売価格をもっと低くできるから増える余地があるということはほとんどなくて、つまり、車のメーカーが違うとか、車種が違うとか、グレードが違うとか、販売車種の多様性に応じて販売店というものは増えていく性質を持っているのに対して、車の売却については、下取りという商慣行があるところに買取専門店が登場するというのは、価格の問題しかありません。また、それがなければ車の買取専門店の存在意義もなくなるわけです。つまり、従来の下取り価格より、高い価格で買取価格を提示できなければ、買取専門店が存在しうる理由はないわけです。

 

何が言いたいかというと、新しい業態である車の買取専門店が存在しうる以上、従来のディーラー等の下取り価格より、買取専門店の車の査定価格のほうが低いということは、論理的にありえないということです。

 

さて、この車の買取事業の誕生によって、われわれユーザーの車の買い替え時には、車を手放す方法の選択肢が増えたわけです。しかし、この論理的には買取価格が高いとされる買取専門店の誕生によって、ユーザーのほとんどが買取専門店で愛車を売却するようになったかというと、皆さまがそうでないと感じておられるように、まだまだ少なく、2割程度と推測されています。

 

それは、従来どおり下取りに出している人から見れば、下取りのほうが面倒くさくなく、買取専門店のほうが買取価格が高いといっても、どれくらい高いのか想像するしかない、というのがおもな理由なのでしょう。つまり、これまでは、自動車に対する意識の高いユーザーだけが、車の買取専門店を利用していたといってもよいでしょう。

 

しかし、インターネットの普及は、まったく新しい愛車の売却方法を生み出すことになります。つまり、「下取り」より「買取専門店」のほうが、論理的に買取価格が高くなるといいましたが、さらに車の査定を高価にできる買取方法が登場してきたわけです。

 

つまり、より高価な買取額を実現する基本的な考えというのは、他店と比較するということですが、これまでなら、実際にいくつかの車の買取専門店を回らなければ出来なかったものが、インターネット革命の進展は、これをより簡単に実現することを可能にしたのです。

 

2002年に始まった、カービューの「愛車無料査定」は、ユーザーが愛車の情報をパソコン上で一度入力するだけで、複数の査定会社(現在600社参加)へ一括査定依頼できる、きわめて簡単なものでした。これによって、自動車の買取業態は、さらにあらたな時代を迎えたということができるでしょう。

 

以上は、愛車の売却方法 について、以下のように、まとめることができると思います。

車買取業態の変遷

  第1期  〜80年代  「下取りオンリー」 の時代

  第2期  90年代    「下取り + 買取専門店」 の時代

  第3期  00年代〜  「下取り + 買取専門店 + インターネット活用」 の時代

 

※カービューの「愛車無料査定」については「車を売る3つの方法」をご覧ください。